水引草
日中はまだ少し汗ばみますが
朝夕は涼しくなり
秋の気配が忍び寄ってきています。
我が家の庭では
今、水引草がたくさん群れて咲いています。
大好きな野花で
奈良に引っ越す時
前の家から大切に持ってきたものが
広がりました。
前の家では、自然に鉢に出てきたのです。
ただ、白いのしかなかったので
赤いのがほしくて
1昨年、知り合いに分けてもらって
植えました。まだ赤い方は増えてなくて
ほとんど白です。
毎年、この花が咲くと
ああ、秋が来たのだなぁと思います。
鉢植えにしたのを美術館の坪庭にも置いたのですが
日照が悪かったのか今年は芽を出してくれませんでした。
残念・・・・
若い頃、好きだった立原道造の「のちのおもひに」という詩にも
この野草の名前が出てきます。
夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に
水引草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへつた午さがりの林道を
うららかに青い空には陽がてり 火山は眠つてゐた
――そして私は
見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
だれもきいてゐないと知りながら 語りつづけた……
夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもひ
忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには
夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう